鳴りで苦しむ患者さんは非常に多く、われわれのクリニックにも毎日その悩みを相談し、解決の糸口を求める方

が後を絶ちません。われわれ医師もその治療に患者さんと一緒に悩み、少しでも耳鳴りを下げることができないかと、

奮闘いたしております。

鳴りの臨床は医師にとって常に古くて新しいものです。しかも耳鳴りの本態、発生の機転は依然として不明な点が

多いものです。

鳴りは、内耳から脳までの聴覚系の神経の興奮や抑制により産み出された異常信号により引き起こされる知覚障

害と言われております。従ってその診察および治療には耳鼻咽喉科学的な側面はもちろん、神経内科、脳神経外科、

精神科、一般内科その他を含めた多面的なアプローチが必要となります。

鳴りは苦しいもので、中には真剣に耳鳴りを苦に自殺まで考え、実際に試みた方もおられます。「耳鳴りは治りませ

ん」と医師から言われ、かえってその苦痛を大きくする患者さんもおられます。American Tinnitus Associationによると、

アメリカにはほぼ5000万人の耳鳴患者さんがおり、その中で1200万人の患者さんがひどい耳鳴に苦しみ、さらに約200万

人の患者さんが何らかの日常生活に支障を来しているという報告があります。このように苦しんでいる患者さんの多い耳

鳴りなのですが、治療の歴史は古く、耳鳴が環境音によって遮断されることはヒポクラテス、アリストテレスの古代から知

られていることです。また、耳鳴発生の仮設に基づき、われわれの経験を交えた薬物治療も試みております。

鳴りに苦しむ患者さんの悩みを我が悩みとして、また、患者さんの笑顔や励ましを支えに、少しでも耳鳴が軽減する

手助けになれれば幸いです。